ゼミ案内

 

担当教員は国際関係論と比較政治学を専門とし、ブラジルを中心としたラテンアメリカ地域について研究してきました。3年生向けの専門演習も、4年生以上向けの卒業論文演習も、本ゼミでは対象とする専門・国や地域を初めからあまり限定していません。初めから専門や地域を限定し、皆さんにテーマを設定してもらうと、必然的に貧困・格差・教育問題・治安、環境破壊、政治不安など、ブラジル研究で既に行われてきたテーマを選ぶ方が多くなります。しかしそうすると、そのテーマから導き出される研究結果も、ある程度まで予想できるものとなってしまうのではないでしょうか。

一方で「学術的・社会的に意義のあるものを選ばなければ」と片意地を張らずに、自身の問題関心(例えば、皆さんの生い立ち、日常生活の中で抱く違和感、大好きな趣味、今までの失敗経験、内なる動機など)を起点に考えてみると、どうでしょうか。その関心を形とするため、まずは所属語科が対象とする地域の問題に埋没せずに発想を広げられたら「自分しか知らない」・「自分だからこそできる」テーマに出会い、今まで誰も気が付かなかった新しい知見を発見できるかもしれません。純粋に心を痛めたり、ときめいたり、あるいは熱くなったりと、自分の中で何か引っかかるものだから、試行錯誤があっても大学生活という皆さんの大切な時間を費やすに値するものとなります。なにより自分自身が研究をしていて楽しいでしょう。
 
その意味で、本ゼミでは①政治や社会の問題に関わること、②所属語科の地域と、どこかの異なる国・地域を比較または関係づけることをできるだけ意識するのであれば、いかなるテーマでも研究の対象となりえます。

例えば、ラテンアメリカ(ブラジル)は貿易や移民の関係から、欧米・中東・アフリカとの交流が栄えてきました。近年では、感染症や気候変動など地球規模の課題に取り組むため、中国・インド・日本などアジアとの関係も深まっています。ほかにも複数の地域専攻のある本学だからこそできる、グローバルな研究テーマは無数に存在しえるでしょう。

教員にできることといえば、皆さんの興味関心に有用と思われる分析枠組みや、既存研究の紹介を通じ、より深い理論的分析力を身につけられるよう、一緒に学んでいくことでしょうか。まずは教員に気軽に相談ください。

 

よくある質問

Q.ゼミの狙いは何ですか。

A.「異なる地域」の間にある「見えないつながりを見つけること」です。地域社会研究コースのゼミは各語科が対象とする国・地域をテーマにするものが多いです。このゼミはそうしたゼミとは異なり、地域内の視点だけではとらえきれなかった見えないつながりを見つけていく橋渡しができたらと考えています。

Q.比較地域研究とは何ですか。

A.比較地域研究とは国際関係論と地域研究を兼ね備えた古くて新しい研究です。特定の地域に限定せず、異なる地域の関係を比較したり関係づけたりして、ひとまず変わりゆく場所を提供し、新しい研究領域を構築していく学問で、最近では「グローバル(国際)関係学」と言われることもあります。平たく言えば、国際関係論と地域研究の両方を学べる欲張りな学問といえるかもしれません。

Q.テーマはブラジルに関連する必要はありますか。

A.担当教員の主なフィールドはブラジルを中心としたラテンアメリカ地域ですが、皆さんが研究対象とする国や地域はまったく限定していません。むしろできるだけ違っている方がよいです。ゼミを通じてブラジルとの関わりに関心を持つ人もいれば、まったく違うテーマを発見する人もいます。

Q.先生の最近の研究テーマは何ですか。

A. ブラジルの環境政治やエネルギー・気候変動分野での協力関係を研究してきました。最近ではブラジルを軸に中国・インド・南アフリカなど非西洋圏の国々との協力関係や新興国による国際秩序の再編にむけた動きに関心を持っています。

Q.ポルトガル語やスペイン語など、応募条件はありますか。

A.特に必要ありません。強いて言えば、新しい領域を開拓する好奇心と創造力をもった「冒険者」であることです。教員にできることは、個々の興味関心に有用と思われる分析の方法や、既存研究の紹介を通じて、より深い理論的な分析力を身につけられるように一緒に学ぶことです。

Q.このゼミでの目標や大切にしていることは何ですか。

A. 自分の問題関心をつきつめて論文という形にすることでしょうか。

ゼミをどのように活用するかは皆さんに委ねられています。あえて目標を定めるのであるなら、ゼミ生一人一人が自分の問題関心をつきつめ、学術の領域にまで高め最後は論文というかたちに表現できるようになることです。

研究をすることは料理を作ることに似ています。おいしい料理をつくるためにはよい食材とよい調理の方法が必要です。おいしい料理はよい食材がないとつくれませんが、ただよい食材があっても調理の方法を間違えると、その食材をダメにしてしまいます。特に卒業論文を執筆する時期になると、素材の良さを活かす調理の方法(分析手法)を学びますが、そもそも食材(研究テーマ)がうまく見つからないという方とは、その食材探しから一緒に学んでいきます。論文を書くことに限らず、何かを形にするためには必ず困難を伴います。しかし簡単ではないから面白く、教員である私も含めてゼミのみんなで一緒に悩んで考える時間をとても大切にしています。

 

教員プロフィール

舛方周一郎

東京外国語大学大学院 総合国際学研究院 准教授

専門は​国際関係論、ブラジル現代政治、最近はアジア・ラテンアメリカ間の比較地域研究

上智大学大学院 グローバル・スタディーズ研究科 博士前期課程修了、同博士後期課程修了、博士(国際関係論)(上智大学、2018年)。

サンパウロ大学国際関係研究所客員研究員(IRI USP) 、ロスアンデス大学政治学部客員研究員、東京外国語大学世界言語社会教育センター講師などをへて2024年より現職。

​詳細な経歴・業績はresearchmap をご覧下さい。

主な著書

・Contributor: “Elecciones presidenciales de Brasil del 2018 y el paradero de  la “Democracia Iliberal,”” en Yusuke Murakami y Enrique Peruzzotti coord,  América Latina en la encrucijada: coyunturas cíclicas y cambios políticos recientes (2010-2020), Editora Universidad Veracruzana、2021.

・Contributor: “Global environmental governance and ODA from Japan to Brazil” (with Cristina Yumie Aoki Inoue, Nanahira de Rabelo e Sant’Anna) In Nobuaki Hamaguchi and Danielly Ramos, eds. Brazil—Japan Cooperation: From Complementarity to Shared Value | SpringerLink, 2022.

・Contributor:”Illiberal Bandwagoning: United States–Brazil Relations under the Trump and Bolsonaro Administrations ” Hiroki Kusano and Hiro Katsumata eds.Non-Western Nations and the Liberal International Order: Responding to the Backlash in the West (routledge.com),2023.

・単著:『舛方周一郎 著『つながりと選択の環境政治学―「グローバル・ガバナンス」の時代におけるブラジル気候変動政策』 (jst.go.jp)』、2022年、晃洋書房。

・共著:『世界の中のラテンアメリカ政治』|東京外国語大学出版会 (tufs.ac.jp) 2023年、宮地隆廣氏との共著。

 

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